カナヘビ。草むらや道端でカサカサッと音がしたら、
  思いきってとびついて手を出し、捕まえられるかどうか、
  ガイアっ子にとってはおなじみの、
  嬉しくて自慢したくて見てほしくなるかわいい生き物である。
  
  虫かごに入ったカナヘビを見つめ、触ったりして遊ぶHちゃんとAちゃん。
  でも実はそのカナヘビはじゃんけんで勝って手に入れた
  Mちゃん(1年)のものだった。
  
  「わたしのカナヘビなんに・・・勝手にさわっとる・・・逃げるかもしれん」とリーダーに訴えてくるMちゃん。
  
  
  
  ガイアに来て3年目になるMちゃんのお母さんは、
  嫌なことを嫌と言えない娘が、ガイアでの人間関係の中で
  自分の気持ちを主張したり、他者を認めたりできる子どもに成長することを
  心から願っている。
  今までMちゃんやお母さんと関わってきたリーダーや僕自身も
  そのことを認識していた。
  
  今年度からガイアキッズで年間を通してMちゃんを担当することになった
  リーダーは、優しくこう応えた。
  
  「嫌なんやね。嫌って言ってみたら?」と。
  
  するとMちゃんは2人の前へ行き、
  ぽつんと小さい声で「いや・・・。」と言えたのだ。
  その声を聞いた2人も理解し、「ごめんね。」と言って返してくれた。
  戻ってきた虫かごを首にかけた時のMちゃんの表情は、
  返してもらったことよりも、自分の気持ちが伝わったことの嬉しさが
  溢れていたように見えた。
  
  「わかってくれたね。良かったね。」と声をかけるリーダーの膝に座り、
  小さくうなづいた。
  
  なぜMちゃんはその日に嫌と言えたのだろう?
  時が来たと考えるのもひとつだが、それだけではないと考えたい。
  
  
  
  このリーダーがMちゃんの強力な援助者となれたと僕は捉えた。
  大切なのはあの場面で大人が安易に仲介しないこと。
  
  さらに、
  
  「みんなで遊びなさい」(指示)
  
  「一人じめしちゃだめよ」(禁止)
  
  「わがままな子ね」(裁き)
  
  これらの指示や禁止や裁きをせず、
  まずMちゃんの嫌だという気持ちを受けとめる存在であれたこと、
  Mちゃんのことを知っていたからこその声かけができ、
  背中を押す援助者であれたことが、
  彼女が勇気を出して一歩踏み出す力になれたのだと思った。

  
  ガイア自然学校で大切にしている「気持ちのコミュニケーション」とは、
  まず自分の素直な気持ちを言葉にして伝えることから。
  
  自分のホンネ、言えてますか?実は大人になるほど簡単じゃない。
  
  
  誰しも心の援助者が必要だ。支え合って生きましょう。