3泊4日の海ぞくキャンプ最後の全員でのふりかえり中、
  輪の外から泣きながら絶叫する大声が聞こえてきた。
  
  何事かと思って見に行くと、
  ある班の子どもたち3人とGリーダーが座って話し合いをしていた。
  
  どうやら、キャンプ中にたまりにたまった嫌な気持ちを
  のメンバーに伝えているようだった。
  しかも枝を持って地面に叩きつけ、声がかれるほどに叫んでいる時もあった。
  暴力があるわけではなく、前後のいきさつを知らなかったこともあり、
  僕は遠くから見守り、その話し合いの場はグループカウンセラーである
  Gリーダーに任せたのだった。
  
  キャンプ後、Gリーダーから詳しく話を聴いて、僕は感動した。
  
  
  
  子どもたちは素直に気持ちのアウトプットをできる力を持っている。
  
  そして相手の気持ちをしっかり聴く力も持っている。
  
  それはとても清らかで美しく、大人顔負けだと感じたのだ。

  
  
  
  話を切り出したTくんは、
  どうやら自分から「言いたいことがある!」とGリーダーに持ちかけたらしい。
  感情むき出しで言い切った後、
  Tくんは相手に対し、「お前たちも俺に言いたいことがあるだろ?
  言えよ。聴くから。」と言った。
  そして言葉通り何も言い返すことなく、
  先程の様子とは対照的にじっとだまって聴いていたのだ。
  
  ひととおり話し合いが終わった頃、
  ずっと傍らで聴いていたGリーダーが「他にはもう言いたいことはない?」
  と問うと、「はい。」と手をあげた子から出た言葉は、「…ごめんな。」だった。
  
  
  
  大人がすぐに仲裁して無理矢理仲直りをさせようとし、
  気持ちにフタをさせることに何の意味があるのだろう。
  
  子どもたちはお互いの気持ちを出し合えば、
  自然と心から謝ることができるし、
  忘れたようにまた一緒に遊びだすことができる。
  
  大人がするべきことは、場を作って気持ちを出せるよう援助することだろう。

  
  
  
  この海ぞくキャンプでは、
  全体を企画マネジメントする大人のスタッフ陣の中での
  気持ちのアウトプットができていなかった。
  僕自身がメンバー同士の気持ちをぶつけ合う場を
  作りきれなかったことを反省した。
  
  キャンプ後のふりかえりで、ようやく溢れだした気持ちと美しく光った涙。
  
  また一歩お互いを分かり合えたのだった。
  
  能登の海も、子どもたちも、Gリーダーも、
  とても美しい存在に感じたキャンプだった。
  
  【文:守屋 謙】