8月のグレートネイチャーキャンプでのこと。
  舞台は富山市の水瓶、有峰湖畔にあるキャンプ場での奇跡・・・。
  
  広大な湖と雄大な北アルプス薬師岳。森の中から湖畔に出ると開放感に気分も高揚する。
  初日から「湖に入ろう!」と盛り上がり、ライフジャケットを装着していざ!
  気温は25℃くらいだったか、水に入ると「つめたーい!」と歓声があがる。
  岸辺で遊んでいた子どもたちは、湖に浮かぶ島に行きたいと言い出し、リーダーと共に遠泳を始めた。
  楽ではないが無理ではないであろうその遠泳を見届けつつ場を離れた。
  
  しばらくして戻ると、オロロ(アブ)に追われながらも
  元気よく帰ってきた子どもたちの笑顔は輝いていた。
  「有峰神社があってみんなでお参りしてきたんよ!」と嬉しそうに報告してくれた。
  
  キャンプ最終日、初日に遠泳した子から、「湖の対岸に行きたい!」という声が出た。
  ざっと見ても1キロ以上はある。僕は体力面、時間、気温水温などを考えて即断できなかった。
  でも、子どもたちの挑戦したい!という気持ち、冒険へのワクワク感を強く感じ、行こう!と決断。
  僕自身も装備を整え、途中で引き返すことも想定しつつ、リーダーと打合せして出発した。
  
  スタートしてみると、僕の緊張感が伝わることもなく、
  子どもたちはリーダーと遊びながらせっせと泳いでいる。
  リーダーの元気な声かけが子どもたちの力になっていると強く感じた。
  半分程の所で時計を見ると30分経過。
  体温を奪われながらようやく対岸に上陸した時には1時間が経っていた。
  身をぶるぶる震わせながらも、ラジオ体操で温まったり、記念に人数分の石を積み上げてきた。
  
  そして帰路。「もう泳ぎたくない。歩いて回って帰る!」と言う子もいたが、
  歩いて帰っていたら日が暮れる。
  「泳ぐしかない!覚悟決めよう!」との声かけで心を決めてくれたのか、
  再び水に入った時の冷たさは想像以上だったが、泳ぎ出すと驚く光景が生まれていた。
  
  行きには弱音を漏らしていた子たちが、前だけを見て黙々と泳いでいる。
  誰も大人につかまったり引っ張ってもらうことなく泳いでいる。
  そんな姿に驚きと感動を覚えた。
  岸に辿り着き時計を見ると、なんと行きより早い50分で帰ってきたのだ。
  温かく迎えてくれる仲間たちに嬉しそうに報告しながら、
  対岸に小さく見える石塔を指さしては教えていた。
  
  奇跡というと大げさかもしれないが、彼ら彼女らの中には一生残る思い出になったはず。
  
  大人の想像を越えた可能性を子どもたちは持っている。僕自身が共に体験し気づかせてもらった。
  
  来夏、あの石塔は残っているだろうか。
  
  誰も行かない場所だから、もしかしたら二度目の奇跡を積み上げられるかもしれない。
  【文:守屋 謙】